「水中でパニックになったらどうしよう」「空気がなくなったらどうしたらいいの?」そんな不安を抱えている初心者ダイバーの方も多いと思います。水中でトラブルを起こさないように潜ることはとても大切です。しかし、いくら注意して潜っていても、時にはトラブルを起こしてしまうこともあるでしょう。そんな時、いかに落ち着いて対処できるかがパニックや事故などの二次被害を減らすことにつながります。
今回は、水中で起きやすいパニックの原因と対処法、またその際によく使う手信号などをご紹介します。いざという時に対処できるよう、ぜひ参考にしてくださいね。
パニックの原因その1:耳抜き
耳抜きができないまま潜行を続けると、耳がとても痛くなります。耳抜きは体質によって抜けやすい人と、抜けにくい人がいます。自分は抜けにくいのに、抜けやすい人と一緒に潜るとどんどんと潜行していく姿を見て焦ってしまうこともあるでしょう。するとさらに耳が抜けなくなって、焦りも強くなり、悪循環を起こしてパニックになることがあります。
耳が抜けない時の手信号
耳がうまく抜けない場合、まず耳を指さし、その後「問題あり」の手信号を出します。問題ありの手信号は、手を開いた状態で水平にし、左右交互にユラユラと揺らしてださい。
耳が抜けない時の対処法
耳が抜けない場合は、まずは少し水深を上げましょう。潜行ロープがある場合は潜行ロープ、ない場合はインストラクターのBCDをつかむと心も落ち着き、耳が抜けやすくなります。水深を上げたらもう一度耳抜きをします。そこで抜ければ、ロープをひとたぐり分水深を下げ、さらに耳抜きをします。これでもかというくらい、小まめに耳抜きをしながら水深を下げていきましょう。途中で抜けない時があった場合は、また少し水深を上げて耳抜きを試みます。これを繰り返しましょう。ある程度の水深になると、水圧の変化が少なくなり、耳抜きも楽になるはずです。
パニックの原因その2:エア切れ
残圧の確認を怠(おこた)ってエア切れになる、もしくはエア切れになりそうになると命に関わることでもあり、パニックに陥りやすいです。そうならないために、小まめに残圧計を確認することが大切です。万が一エア切れになってしまった場合、速やかにインストラクターやバディに伝えましょう。
エア切れ時の手信号
エア切れになった場合は、開いた手を水平にし、首を切るように左右に動かしてください。同時に「エアを分けてください」の手信号である、自分の口元に手を当てて、前後に動かすようにしてサインを送りましょう。
エア切れの対処方法
エア切れを起こした場合、インストラクターもしくはバディにエアがないことを伝え、オクトパスを受け取って呼吸を再開します。呼吸を再開したら、深呼吸をして呼吸を落ち着かせましょう。その後は場所や状況にもよりますが、ダイビングは中断してその場で浮上、もしくは徐々にエキジット場所に向かいます。
エア切れ時はパニックになりやすく、他のダイバーのレギュレーターやオクトパスを奪い取りたくなりがちです。二次被害にもつながるので、絶対にやめましょう。
パニックの原因その3:マスクに水が入る
マスクに水が入ってくることはよくあることです。そのため、慣れてしまえばなんてことのないことです。しかし初心者のうちはちょっと水が入っただけでも不安になりやすいでしょう。マスククリアが上手に出来なかったり、何度マスククリアをしても繰り返し水が入ってくると、強いストレスを感じ、パニックを起こすことが多いです。
マスクに水が入った時の手信号
手信号の出し方は、マスクを指さした後に、「異常あり」の手信号を出します。手を開いた状態で水平にし、ユラユラと左右に動かしてください。
マスクに水が入った場合の対処法
まずはその場でマスククリアをしてみましょう。1回で上手くいかなくても数回繰り返してください。また泳ぎながらでは体が不安定なので、着底して落ち着いて行いましょう。1人でマスククリアをするのが不安な場合、インストラクターを呼び止めてマスククリアをすると安心できます。 何度マスククリアをしても水が入る場合は、髪の毛が挟まっている、ストラップがねじれているなどの問題がある可能性があります。自分で手探りで確認できればよいですが、難しい場合は、手信号で異常を伝えて確認してもらいましょう。
パニックの原因その4:急浮上
初心者によく起こる失敗として、急浮上があります。浅瀬に戻っているのにBCDの排気が追いつかず、気が付いた時には制御ができないようになります。何とか潜行しようと全身で水をかいたり、BCDのボタンをむやみに押しているうちにパニックになることが少なくありません。パニックになると間違えて給気ボタンを押してさらに浮上速度を上げてしまうといった悪循環も考えられます。
急浮上しそうな時の手信号
急浮上しそうな時は正直なところ、手信号を使って伝える余裕はないでしょう。インストラクターを直接呼ぼうにも、ただでさえコントロールが効かないので難しいです。急浮上=グループから距離が離れるということなので、なおさら厳しいです。とにかく急浮上をしないように気を付けてください。
急浮上しそうな時の対処法
急浮上しそうになったら、まずはBCDの排気をしましょう。この時、体が水平や頭が下になった姿勢では、BCDの構造上エアが抜けにくいです。そのため、頭を上にするような姿勢を取ると排気しやすくなります。
そしてできるだけ息を吐いてください。生き物を観察していたり、写真を撮っていたりすると、無意識のうちに息を吸った後に止めてしまいがちです。肺に空気がたくさん入っていれば浮きやすくなるので、いつもより長めに息を吐いてみましょう。 それでもコントロールできない場合は、急浮上中、息を吐き続けるようにしてください。息を止めたまま急浮上すると、減圧症になりやすいです。
まとめ:まずは落ち着いてパニックを防ごう
スキューバダイビング中に起こりやすいパニックの原因と対処法、よく使う手信号についてご紹介しました。
どんな原因であれ、パニックを起こしそうになったらまずは深呼吸をして落ち着くことが大切です。仮にエア切れで緊急性があるような場合でも、落ち着いて他のダイバーからエアをもらえば問題ありません。パニックになってしまうと、二次被害、三次被害にもつながりかねません。しかし、いざトラブルが起きると、落ち着いて行動できないものです。少しでも落ち着けるように、今回の記事を参考にイメージトレーニングをしてみてくださいね。